おぼろ橋
From KAYŌ 💖 DAY
歌词
おぼろ橋・・・・・白川和子 おぼろ橋……おぼろ橋…… 雨がふっておりますね ひと様にお話ししたって 面白くも何ともないお話でございます それでもこの雨だれの音よりかは いくらかおなぐさめ出来るかも知れません あなた様…… おぼろ橋を御存知でございますか おぼろ橋……おぼろ橋…… 橋の向うに女達の家がございました 小さな茶だんすと、一組のお布団と ふすまの中にはクモの巣にからまれた 古い絵草紙だの その家に来た時に着ていた赤いべべだの ろくなものはございませんでしたけれど 何故か女たちは 捨てようとはしないのでございます おぼろ橋……おぼろ橋…… かあさんもいい人 男衆さんもいい人でございました それでも、そんな家の事でございますから 時にはお客衆と手に手をとって 脱け出す女もおりましたが 橋の途中まで来ると 何故か女は後ずさり ここから先は橋がない…… ここから先はもう行けぬ などと申したそうでございます おぼろ橋……おぼろ橋…… 今夜のように雨に濡れたよるでございました 女たちの家から火が出たのでございます 火はたちまち燃え広がって ゆかた一枚のお客衆は どんどん橋をわたるのに 女たちは橋の途中で引返すのでございます あの橋が見えないで 橋を渡れば世の中へ 生きて戻れると言うのに やがて一人また一人と 燃えさかる家の中へ 消えて行ったのでございます あれはふすまの奥の赤いべべでも取りに おぼろ橋……おぼろ橋…… あなた様には見える橋も 私には雨にけむっておぼろでございます お酒に致しましょうか…… それとも障子をしめて…… |
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