十月の海辺が好きなの
あの真夏 焼けるような砂の上で
恋がめばえる でもその恋は
照りつける太陽に
すべてヴェールをはがれた むき出しの恋
今その恋も 真夏の太陽とともに消えて
ここにあるのは冷たい風と
荒々しい波の怒りだけ
でもわたしは好き 大好き
だから ひとりでこの海岸に来る
十月の海辺が好きなの
灰色の雲が たいぎそうに海の上にねそべっている
わたしも砂の上にねそべってチョコレートをたべて
そして昔読んだおとぎ話を思い出す
嵐の翼をもった黒い鳥が十月の海辺で
波にぬれていた少女をさらって行った
その少女の海よりも澄んだひとみと暖かい血が
悪魔のために黒い鳥にされていた若者の呪いを解いた
そんなおとぎ話をふと思わせる 荒れた海
わたしは大好きなの