その朝は 野あざみが
そよ風に 揺れていた
その人は 森かげで
優しげに 手をふった
恋なんて 知らないの
どうしたら いいの
友だちの リスの子に
白鳥は つぶやいた
その午後は 蜜蜂が
ハミングで 唄ってた
その人は乾草(ほしぐさ)を
抱くように 抱きしめた
幸せに なりたいの
愛しても いいの
木もれ陽が まぶしくて
白鳥は 目をとじた
その夜は 湖も
むらさきの 霧だった
その人は 旅に出る
さよならの 手をふった
呼んだけど 消えてくの
どうしたら いいの
メルヘンの かなしさに
白鳥は 泣きぬれた